2013/08/29

10 x 10 American Photobooks : Sawako Fukai














今回「 10x10 American Photobooks」のOnlineセレクターとしてプロジェクトに参加させていただきました。
I am excited to be one of the selectors for wonderful 10 x 10 American Photobooks project.

「1987年以降のアメリカ写真集」というテーマをいただき、世界的に写真というメディアがコンテンポラリーアートとして認識されるようになったプロセスとちょうど重なるその時期に、現代写真の文脈の成長に重要な役割を果たした作家の作品集を中心にセレクトしました。写真の起源に近づこうとする作家、写真集を表現の最終形とする作家、ウェブをソースとする=写真を「撮らない」作家。写真をリサーチの手段にする作家、ストリート写真の伝統を受け継ぐ作家。どれも知的な好奇心に満ちた実験でありながら、真摯な自己表現の形であることも、とても好きな10冊です。

Under the interesting theme of “American Photo books after 1987,” I have selected the books which have influenced on the expansion of the definition of “contemporary photography”, because those decades have been a process for photographic media to be acknowledged as an important part of contemporary art. The one who tries to reach out for the origin of photography, the one who makes photo books as the final form of his photographic work, the
one who does not take photography but use the internet as a source. Photography is a method for one’s sociological research. Another one inherits the great tradition of street photography. I
like all of them because all of these are intelligent and inquisitive adventures, experiments and at the same time very sincere forms of self-expression.


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My Selection for 10 x 10 Online : 


1.    Doug Aitken. 99 Cent Dreams. (Aspen: Aspen Art Museum, 2008). 


















巨大なスクリーンを使用したインスタレーション等で知られるDoug Aitkenのスチール作品を集めた図録。実際に作品を体験すると、その圧倒的な孤独感と空気の色も質も変化するような経験は忘れることが出来ない。映像作品が主体の彼だが、その一瞬一瞬を切り取った写真もまたエイケンの素晴しさを物語っている。

The catalogue includes still images taken by Doug Aitken, widely known as his works using large screens. His installation is an purely unforgettable experience of photography which overwhelms us with its isolation. This book tells not only his film works, the slices of moments of them are also beautiful.

 

2.    Roe Ethridge. Apple and Cigarettes. (Beverly Hills: Gagosian Gallery, 2006). 



ロー・エスリッジ初期の名作写真集。大きなフォーマットのスチール写真、広告写真、ファウンド・フォト、再撮影したボツ画像等を並べて編集することで、ストーリー性を持たせると思いきやその真逆の意図が感じられる。終わりもない、始まりもない、編集自体に意味もない、でも無ではなく自由、と思わせる力ある作品。

One of the greatest books of Roe Ethridge, known with his editing of photography mixing large format portraits, advertising images, found photos. This editing is not to create a story, but the opposite. There is no ending, no beginning, no narrative, the editing itself has no intention. Still it is not nothing, it is rather a freedom.


3.    Lee Friedlander. Stems. (New York: Distributed Art Publishers, 2003). 



路上や車窓からアメリカの風景を切り取っていたフリードランダーが90年代中盤スティルライフに方向転換。膝を痛めて自宅療養中に夫人が飾った花の茎を撮影した作品。モノクロームで静謐に、しかしワイルドに、茎とガラスが織りなす情景をじっと観察した写真家の目。写真家を写真家にしているものは足だけではなく目なのだ
と痛感。

Friedlander, who was on the street, in town with camera in his hand, changed his way to be a still life photographer in the mid 90s. WIth his knees injured, he had to stay home and took these works of stems of flowers, decorated by his wife. Quiet and wild pictures of stems through the glassed of the vases in Black and White. It was his eyes, not only feet, made him a master of photography.


4.    Jason Fulford. Mushroom Collector. (Amsterdam: The Soon Institute, 2010). 




写真家であり、出版社J&L Booksの主宰でもあるJason Fulfordによる写真集。友人からもらった、フリーマーケットで入手した大量のキノコの写真と彼自身によって撮影された写真が混在している。アメリカ写真の伝統を受け継ぎつつ現代写真のプレイフルな軽やかさを併せ持つ、近年のアメリカ写真を代表する作家の1人になるだろうという予感。

Jason Fulford , a photographer and a founder of J&L Books made this book started with the pile of pictures of mushroom which his friend found in a flea market. The playful and intelligent mixture of images tells that his appearance is important for contemporary American photography.


5.    John Gossage. The Pond. (New York: Aperture, 2010). 
















Henry Thoreau的な美学やAnsel Adamsの捉えたありのままのワイルドネイチャーとその美しさ。それらは脈々と、しかしアメリカの最重要な美的基準の一つとして、大きな山のようにどっしりと常に存在している。この写真集はその対局にある人間と自然の境界、情景でなく現実、を描こうとしている。

The American beauty, which is based on the aesthetics of Henry Thoreau, the absolute beauty of untouchable landscapes by Ansel Adams.Those are quietly standing behind and looking down like a big mountain as one of the absolute quality. This book tries to capture the other side of the nature, it is more real, like a human touched nature and its beauty.


6.    Ryan McGinley. Everybody Knows This Is Nowhere. (New York: Dashwood Books, 2010). 



ある瞬間と瞬間の狭間にある微妙な人間の美しさを、この上なく冷徹な目線で捉える力にRyan McGinleyが圧倒的な実力を持つ写真家なのだと実感させられた写真集。ストリートや若者やヌードという華やかな要素ではなく、その更に奥にあるものを捉えようとする写真家の姿が感じられる。

This book convinced me of how powerful Ryan McGinley is, with the images of very subtle beauty of human shapes between the decisive moments taken with such a calm eyes. He is not taking picture of youth, nudes, street or any other those pop elements, but something hidden, something beyond those subjects.



7.    Taryn Simon. An American Index of Hidden and Unfamiliar. (Göttingen: Steidl, 2008).



核廃棄物の処理サイトのチェレンコフ光、アメリカの税関で保管されている食物、マリファナを研究目的に栽培している施設等を、一見するとアメリカ伝統写真に基づいた風景写真で捉える。膨大なリサーチを重ねてアメリカが抱える矛盾や病理を描き出すサイモンの政治性は、彼女を現代のアメリカでもっとも重要な写真家の1人たらしめている


The photographs including radioactive containers in a storage facility for nuclear waste; the recreational facility of a high-security prison; the headquarters of the Ku Klux Klan with its Wizards, are captured with traditional American photography style of landscapes, which makes us not realize the context instantly. Simon is definitely one of the most important contemporary American photographers with her great political attitude depicting the contradiction the country has, based on a massive research and study.


8.    Alec Soth and Lester B. Morrison. Broken Manual. (Göttingen: Steidl, 2010). 


アレック・ソスによる「世捨てマニュアル」。造本の素晴しさも手伝って、ユーモアと知性と、確かな写真の力とアメリカらしいワイルドさが同居する、現代アメリカらしい写真集。

A "broken manual" by Alec Soth. With its perfection of book making, it is definitely one of the greatest American photobooks with humor, wildness, intelligence and such a power of photography.


9.    Penelope Umbrico. Penelope Umbrico: Photographs. (New York: Aperture, 2011).



90年代からのインターネットの一般化の過程でヴァナキュラー・フォトやユビキタス・フォトを作品化し脚光を浴びたウンブリコの作品集。イメージの集積そのものに意味があるのではなく、私たちが何を「見て」いるのか、どのように視覚から情報を処理しているのか、その中でどのように現代の文化が出来上がっているかについての洞察と言える。

In the process of internet expansion since the 90s, Umbrico has worked on the pieces using the vernacular photos and ubiquitous images as a resources. The gathering of the images she collected itself has no meanings but what it tells is that what we see and how we consume the information through the images, and how the culture itself is build upon it.


10.  James Welling. Flowers. (New York: David Zwirner, 2007).



コンセプチュアル・フォトグラファーであるJames Wellingによる、カリフォルニアに自生する花や植物の多重露光作品。アメリカン・リアリズムの代表的画家であるアンドリュー・ワイエスの影響を強く受けているウェリングの美しい作品は、アメリカ絵画と写真の関係についても考察するきっかけを与えてくれる。

A beautiful images made by a conceptual photographer James Welling using a common southern California plant. Those images by Welling, who were deeply influenced by Andrew Wyeth, one of the most famous painters of American Realism, give us a opportunity to think about the relationship between American photography and paintings.



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深井佐和子
Sawako Fukai



 1981年東京生。上智大学卒業後デザイン会社を経て2008年よりG/P galleryディレクター兼artbeatpublishersエディター。国内外の写真展や写真集のプロジェクトに関わる他、写真雑誌などで執筆を担当。

Born in Tokyo, in 1981. Graduated from Sophia Univ., worked in design companies. Has been working as a director of G/P gallery and an editor of artbeat publishers. Working in various projects of photo exhibitions and publications. Also works as a writer for magazines and websites.



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2013/06/17

RETRIEVED : Charlotte Dumas (2011, The Ice Plant )







9.11の直後、ワールド・トレード・センターとペンタゴンという二つのテロ現場で救助にあたった、全米から集められた100匹近くの人命救助犬。凄惨な現場で昼夜を問わず消防士に寄り添って働くその存在自体が、人々にとっては小さな希望や慰みであった。彼等の映像は9.11の一つの象徴としてCharlotte Dumasの心を捉えた。

10年後、Charlotte Dumasはそれらの救助犬の行方を調査し、その中でまだ生きていた15匹を訪れる旅に出た。

アメリカの様々な街で生き続けていた犬達は、10年前のあの日、同じ場所で同じ使命のもとに集められ、確かに共に働いていた。

そんな犬達のポートレートから成る写真集『RETRIEVED』。
Charlotte Dumasの深くえぐるような力強いポートレートが光る名作。

2013/06/05

AC:ISA GENZKEN WOLFGANG TILLMANS(Museum Ludwig Koln, 2001)






彫刻を主なメディアとする現代アーティストISA GENZKENと写真家WOLFGANG TILLMANS。旧知の仲の2人にとって初めての2人展が2001年にケルンのLudwig美術館で開催された。その時のカタログがこの本。

ティルマンスの5.5mx8mの写真作品「Wake」と、その前にそびえ立つ、ゲンツケンによる鏡面の巨大なスカルプチャー。作品の中に存在する観客、それを含む光景、延々と反復するイメージ、拡張する空間。

この展覧会のドキュメンテーションとなるカタログは、それぞれの制作風景のドキュメントと、お互いのポートレイトが収められている。関係性や、展示されている作品にいたるまでの一貫した制作という行為が良く分かる、とても良いカタログ。互いのメディアで最重要アーティストであるこの2人の関係が、やはりお互いのメディアそのものの意味を考える上でも、意義深いコラボレーションをしていることが分かる。

MADE OF CONCRETE : Körner Union (Swiss Federal Office of Culture, 2011)







スイスのグラフィック・デザイナー/フォトグラファーユニット、Körner Unionの作品集。

静謐なオブジェのポートレート。


よく見ると…


スケールが巨大!絡まり合うオブジェたち、車、ピアノ、本物の木!合成ではなく、スタジオ撮影で作られてる。


展示方法を見ると、オーセンティックな白いフレームに、良い子なモノクロ写真の顔をして展示されている。


本業はコマーシャル・フォトグラファーの彼等。
ファッション・シューティングが特にキュートです。
スイスのハイセンスなユーモアはホント、無敵。



ちなみにメイキングを記録したタブロイド紙が発行されていたんだけど、そちらは既に絶版。私はベルリンのMottoで見ました。(売ってはくれなかった)

2013/06/04

Broken Manual : Alec Soth (2010, Steidl)










アレック・ソスによる「世捨てマニュアル」。

変わったタイトルの通り、本当に夜逃げした人をリサーチして制作されている。

身の隠し方、変装の方法、ログハウスの作り方、サバイブの仕方。

「ステップ7:女を避けろ/世を捨てるのならばあきらめなければならないこともある。答えは単純だ、女を諦めろ」

などハードボイルドなテキストも収録。

テキストのイラストレーションとして機能する写真と、逃亡者の肖像や風景写真がランダムに構成されている。全体のベースになっているのはソスの圧倒的に上手な、アメリカの伝統的な写真。その意味で、<マニュアル>だけど、実は問答無用で厳然たる<写真集>で、そこもジョークなの?と思わせるくらいの余裕が感じられる。ほどに、写真が上手。

この写真は世界中で高い評価を得て、スペシャルエディションもすぐに完売、廉価版の写真集も絶版になった。しみじみ思うけれど、このような不思議な写真集が讃えられ、求められ、語られ、伝説になるなんて、つくづく奇妙で楽しい世界ですよね。

2013/03/13

FILMS : Paul Graham ( MACK, 2011)




写真家ポール・グラハムによる、フィルムへの賛辞。20世紀の偉大な発明、光を写すという夢を現実にした魔法のメディア、フィルム。たった1世紀ののち、まさに今消え行くメディアの代名詞でもあるわけだけど、グラハムはその存在の不思議さに、ワクワクする秘密に今一度寄ろうとする。

自身の過去の作品のネガ、また何も写さなかった最後のコマをスキャンし、それらを超拡大すると、見たことのないアブストラクトな景色が浮かんでくる。過去の作品のアプロプリエーションでありながら、自身の「ネガによる回顧(Negative Retrospective)」でもあるわけです。(カッコいい)




彼自身によるデザインも潔い。余白がなく、それ以外に目に入らない本の作りが、作品に没入させてくれる。全面グロス加工によるピカピカつるつるの手触りも、フィルムのテクスチャーを想起させる。

MACKの公式解説曰く、

「希望に満ちたオマージュであり、別れの言葉でもあり、驚きに満ちた視覚体験でもあり。『Film』は、20世紀の写真メディアに関わる全ての方のために送られる本である」

"Part wistful homage, part farewell, part visual wonder, Films is a book for anyone who engaged with photographic material in the 20th century."

こんなこと言われたら、欲しくなっちゃいますね。



2013/03/05

NYLPT : Jason Evans ( MACK, 2012)


NY、ロンドン、パリ、東京(頭文字をとって「NYLPT」)で2005〜2012年の間に撮影したモノクロの多重露光写真をまとめたJason Evansの最新作。

表紙は作家の定番といえるツートーンの三角。見開き左ページに写真、右ページはグレーから濃い黒へと徐々に変化していく。(小口がこんなにキレイ)


作家のグラフィカルな対象や光の現象に対する興味と、全ての都市においてビジターであるゆえの客観的、または新鮮な視点が文字通り重なって、新しいイメージを生み出している。

モノクロ写真と濃い墨の要素で、画面としてはかなり暗めであるし、多大な影響を受けているであろう森山大道スタイルとも言えるのだが、荒さというよりも不思議なポップさと明るさ、繊細さが印象として残る。

ファッション写真家としても活躍する彼だが、aperture誌などへの寄稿でも知られる通り写真に精通。知的な試みが心地よく感じられる一冊。






2013/02/14

NOSTALGIA : Sergei Mikhailovich Prokudin-Gorskii ( Gestalten,2012)



かつて世界の面積の1/6を占めたと言われる、帝政ロシア。時の支配者、ニコライ2世の擁護の元、カメラを持ってロシア全土を旅し、記録をした写真家がセルゲイ・ミハイロヴィチ・プロクジン=ゴルスキー。撮影されたものの多くは1900年前後だが、彼は3色のフィルターを通したカラー写真の技法を独自に開発していたため、その多くをカラーで記録していた。パリに亡命したため、乾板はロシア革命の戦火を逃れて無事保管されており、近年、当時の風景がデジタル合成によりイメージがよみがえった。

…という本。これはとっても面白い。

記録写真、なので当然芸術目的では撮影されていない。

だけど、現在のポートレートの定石ともいえるポーズや、人と風景を一枚に入れようと試みる構図など、写真の起源に近いものが山のようにある。

東は日本海を渡ってすぐ、西は黒海周辺までのとんでもない広さの領土内、当然多様な民族がいるわけで、それらの100年前の暮らしを見るのもとても面白い。民族衣装もカッコいい。という民族学的、タイポロジー的な見方も出来る。

また、三色合成の過程で出てきたエラーや、カビ?と思われる斑点などが時に広大な風景写真にただならぬグラフィックをもたらしていることも。

現代写真をとりまくキーワード、色々な見方が出来るということです。
250点以上のボリュームで、見応えも満点。




職業を生きた、当時の人々。




三色合成により、端にエラー(版ずれ)が出る。



2013/02/06

ATLANTE : Luigi Ghirri ( Carta, 2000)

Luigi Ghirri初期の作品シリーズ。

私物の世界地図をひたすらマクロで撮影したグラフィカルなビジュアルが続く。

私たちの生きる土地や自然がどのように記号化とイメージによって簡略化され、そこからこぼれ落ちているものの大きさを探っている。ポップだけど、クリティカルな作品。

彼の作品の中ではコンセプチュアルなものの一つ。

スナップも抜群だけど、複写もさすがのかっこよさ。

彼のいた北イタリアを旅するのが楽しみ。





2013/01/29

BECOMING BLUE : Anouk Kruithof (VVV BERLIN, 2009)








オランダ人アーティストAnouk Kruithofの作品、『Becoming Blue』。被写体に、自分が持っている青いアイテムを身につけてもらい、一人一人セッションしながらポートレート撮影を行った。驚きや悲しみなど、心情を自ら語る表情の一片をそれぞれ捉えた写真たち。
が、どこか変。表情やジェスチャーも奇妙で、いわゆる表情と表情の合間の一瞬が映った写真をわざとセレクトしている。

青という色が持つ心理的な意味(「ブルーになる」というタイトルも)や規定のポートレートの意味に問いかけながら制作された作品。国民性で語るのは安易なので避けたいけれど、オランダで写真を学んだ作家は常に規定の意味を批判的に問いかける姿勢がある。

2012年にNY・ICPのInfinity awards(Young Photographer Section)を受賞し、今年からISCPのアーティスト・イン・レジデンスでNYに滞在するそう。この本はスタンダードな造本だが、この他にも非常に凝った作りの写真集をいくつか出版している。作品のインスタレーションもいつもインタラクティブで、観客が手鏡を持って反射して作品を参照したり、手で壁面の作品がめくれたり、持ち帰ることが出来たり…
リニアな写真の見方、視点の固定を回避して、多方面から観賞することが出来る写真、というものに一貫してこだわっている。

2013/01/21

A Selection of Snapshots Taken by Felix Gonzales-Torres (A.R.T.Press,2010)





キューバ生まれのアーティスト、フェリックス・ゴンザレス=トレスが、1990から、亡くなる直前の1995年までの間に撮影したスナップショットを、彼の没後、知人・友人たちから集めて編集された作品集。

フィルムで撮影された日常の風景は、記憶の中に入り込んだようで他人のものなのに懐かしいし、早すぎた彼の急逝を思うと切なく見える。プリントの裏に書かれたメモや誰かに宛てたノートも、散文のよう。

愛猫、愛犬、チャーリー・ブラウンの人形、ミッドセンチュリーの家具、花、作品のインスタレーション風景。何もかもが延長線上に存在した。切実な祈りのようなもの。

ところで90年代の写真を思春期に通過した私たちにとっては、フィルムの甘く色あせたイメージそのものに、どうしたって心を動かされる。それから逃れることは多分できない。




2013/01/14

THE SARTORIALIST : Scott Schuman ( penguin Books, 2009)

ここ5年くらいの街角スナップブログは全てこれをインスピレーションに始まってると言っていいくらい、の名作。

世の中にこんなにオシャレな人が無防備に散らばっているなんて、世界はなんて広くて素敵なんだろう。ぼうっとしてちゃいけない。

一冊通して見るとややToo Much。オシャレすぎて疲れる。(贅沢だ)
個人的にはブログをブラウザで見る方が好きで、グーグルリーダーの記事にまぎれて「On the street...」の文字で始まる今日の1枚が現れるとハッとする。エスプレッソのように気分がリセットされて立ち上がる。






ところでこの本も比較的小さい。
パフュームのボトルと比較。


2013/01/13

DOCUMENTING SCIENCE : Berenice Abbott ( Steidl, 2012)





パリのJeu des Paumeの展示はいつも面白くて、会場はいつ訪れても大盛況。写真を前に真剣に語り合う様々な世代の人々の姿にパリの文化の豊かさを見て、訪れる度に感激する。

こちらは昨年開催された展覧会で見つけた写真集。

Berenice Abbottは30年代の女性写真家。MIT研究所との共同作業で制作した「科学写真」は、「資料」だけどすごくかっこいい。





「静電気」の写真。




「同時に放たれた2つのゴルフボール」

バリー・ユアグローみたいなタイトル。





リー・フリードランダーのようなかっこよさ。


ところでパリのJeu des Paumeへは、ルーブルの三角からコンコルドに向かってJardin des Tuileriesを歩き、真ん中にあるスタンドでカフェを買って、公園を抜けて行くのがいい。人々で賑わう夏も、枯葉の舞い散る寂しい秋も、いつでも詩情に溢れた公園。



2013/01/09

Polaroids : Guy Bourdin (Editions Xavier Barral, 2009)







Donlon Booksのショーウィンドウで見つけて、思わず買ってしまった写真集。ギィ・ブルダンの作品はフリーズしたような「完璧な瞬間」が特徴だけど、その撮影ポラではその「完璧な瞬間」の前後や、画面で見切れているパーツが見える。それがすごく生々しくて、色っぽい。はみ出した口紅が見えたような感じがする。

いい具合に退色したポラロイドが、あれらの写真の背後に「撮影現場」が存在したこと、その息づかい、完成度の高いギィ・ブルダンの写真の持つ「美しさ」とはまた別の美を見せてくれる。