かつて世界の面積の1/6を占めたと言われる、帝政ロシア。時の支配者、ニコライ2世の擁護の元、カメラを持ってロシア全土を旅し、記録をした写真家がセルゲイ・ミハイロヴィチ・プロクジン=ゴルスキー。撮影されたものの多くは1900年前後だが、彼は3色のフィルターを通したカラー写真の技法を独自に開発していたため、その多くをカラーで記録していた。パリに亡命したため、乾板はロシア革命の戦火を逃れて無事保管されており、近年、当時の風景がデジタル合成によりイメージがよみがえった。
…という本。これはとっても面白い。
記録写真、なので当然芸術目的では撮影されていない。
だけど、現在のポートレートの定石ともいえるポーズや、人と風景を一枚に入れようと試みる構図など、写真の起源に近いものが山のようにある。
東は日本海を渡ってすぐ、西は黒海周辺までのとんでもない広さの領土内、当然多様な民族がいるわけで、それらの100年前の暮らしを見るのもとても面白い。民族衣装もカッコいい。という民族学的、タイポロジー的な見方も出来る。
また、三色合成の過程で出てきたエラーや、カビ?と思われる斑点などが時に広大な風景写真にただならぬグラフィックをもたらしていることも。
現代写真をとりまくキーワード、色々な見方が出来るということです。
250点以上のボリュームで、見応えも満点。
職業を生きた、当時の人々。
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三色合成により、端にエラー(版ずれ)が出る。
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