2013/03/13

FILMS : Paul Graham ( MACK, 2011)




写真家ポール・グラハムによる、フィルムへの賛辞。20世紀の偉大な発明、光を写すという夢を現実にした魔法のメディア、フィルム。たった1世紀ののち、まさに今消え行くメディアの代名詞でもあるわけだけど、グラハムはその存在の不思議さに、ワクワクする秘密に今一度寄ろうとする。

自身の過去の作品のネガ、また何も写さなかった最後のコマをスキャンし、それらを超拡大すると、見たことのないアブストラクトな景色が浮かんでくる。過去の作品のアプロプリエーションでありながら、自身の「ネガによる回顧(Negative Retrospective)」でもあるわけです。(カッコいい)




彼自身によるデザインも潔い。余白がなく、それ以外に目に入らない本の作りが、作品に没入させてくれる。全面グロス加工によるピカピカつるつるの手触りも、フィルムのテクスチャーを想起させる。

MACKの公式解説曰く、

「希望に満ちたオマージュであり、別れの言葉でもあり、驚きに満ちた視覚体験でもあり。『Film』は、20世紀の写真メディアに関わる全ての方のために送られる本である」

"Part wistful homage, part farewell, part visual wonder, Films is a book for anyone who engaged with photographic material in the 20th century."

こんなこと言われたら、欲しくなっちゃいますね。



2013/03/05

NYLPT : Jason Evans ( MACK, 2012)


NY、ロンドン、パリ、東京(頭文字をとって「NYLPT」)で2005〜2012年の間に撮影したモノクロの多重露光写真をまとめたJason Evansの最新作。

表紙は作家の定番といえるツートーンの三角。見開き左ページに写真、右ページはグレーから濃い黒へと徐々に変化していく。(小口がこんなにキレイ)


作家のグラフィカルな対象や光の現象に対する興味と、全ての都市においてビジターであるゆえの客観的、または新鮮な視点が文字通り重なって、新しいイメージを生み出している。

モノクロ写真と濃い墨の要素で、画面としてはかなり暗めであるし、多大な影響を受けているであろう森山大道スタイルとも言えるのだが、荒さというよりも不思議なポップさと明るさ、繊細さが印象として残る。

ファッション写真家としても活躍する彼だが、aperture誌などへの寄稿でも知られる通り写真に精通。知的な試みが心地よく感じられる一冊。