2013/01/29
BECOMING BLUE : Anouk Kruithof (VVV BERLIN, 2009)
オランダ人アーティストAnouk Kruithofの作品、『Becoming Blue』。被写体に、自分が持っている青いアイテムを身につけてもらい、一人一人セッションしながらポートレート撮影を行った。驚きや悲しみなど、心情を自ら語る表情の一片をそれぞれ捉えた写真たち。
が、どこか変。表情やジェスチャーも奇妙で、いわゆる表情と表情の合間の一瞬が映った写真をわざとセレクトしている。
青という色が持つ心理的な意味(「ブルーになる」というタイトルも)や規定のポートレートの意味に問いかけながら制作された作品。国民性で語るのは安易なので避けたいけれど、オランダで写真を学んだ作家は常に規定の意味を批判的に問いかける姿勢がある。
2012年にNY・ICPのInfinity awards(Young Photographer Section)を受賞し、今年からISCPのアーティスト・イン・レジデンスでNYに滞在するそう。この本はスタンダードな造本だが、この他にも非常に凝った作りの写真集をいくつか出版している。作品のインスタレーションもいつもインタラクティブで、観客が手鏡を持って反射して作品を参照したり、手で壁面の作品がめくれたり、持ち帰ることが出来たり…
リニアな写真の見方、視点の固定を回避して、多方面から観賞することが出来る写真、というものに一貫してこだわっている。
2013/01/21
A Selection of Snapshots Taken by Felix Gonzales-Torres (A.R.T.Press,2010)
キューバ生まれのアーティスト、フェリックス・ゴンザレス=トレスが、1990から、亡くなる直前の1995年までの間に撮影したスナップショットを、彼の没後、知人・友人たちから集めて編集された作品集。
フィルムで撮影された日常の風景は、記憶の中に入り込んだようで他人のものなのに懐かしいし、早すぎた彼の急逝を思うと切なく見える。プリントの裏に書かれたメモや誰かに宛てたノートも、散文のよう。
愛猫、愛犬、チャーリー・ブラウンの人形、ミッドセンチュリーの家具、花、作品のインスタレーション風景。何もかもが延長線上に存在した。切実な祈りのようなもの。
ところで90年代の写真を思春期に通過した私たちにとっては、フィルムの甘く色あせたイメージそのものに、どうしたって心を動かされる。それから逃れることは多分できない。
2013/01/14
THE SARTORIALIST : Scott Schuman ( penguin Books, 2009)
ここ5年くらいの街角スナップブログは全てこれをインスピレーションに始まってると言っていいくらい、の名作。
世の中にこんなにオシャレな人が無防備に散らばっているなんて、世界はなんて広くて素敵なんだろう。ぼうっとしてちゃいけない。
一冊通して見るとややToo Much。オシャレすぎて疲れる。(贅沢だ)
個人的にはブログをブラウザで見る方が好きで、グーグルリーダーの記事にまぎれて「On the street...」の文字で始まる今日の1枚が現れるとハッとする。エスプレッソのように気分がリセットされて立ち上がる。
世の中にこんなにオシャレな人が無防備に散らばっているなんて、世界はなんて広くて素敵なんだろう。ぼうっとしてちゃいけない。
一冊通して見るとややToo Much。オシャレすぎて疲れる。(贅沢だ)
個人的にはブログをブラウザで見る方が好きで、グーグルリーダーの記事にまぎれて「On the street...」の文字で始まる今日の1枚が現れるとハッとする。エスプレッソのように気分がリセットされて立ち上がる。
ところでこの本も比較的小さい。
パフュームのボトルと比較。
↓
2013/01/13
DOCUMENTING SCIENCE : Berenice Abbott ( Steidl, 2012)
パリのJeu des Paumeの展示はいつも面白くて、会場はいつ訪れても大盛況。写真を前に真剣に語り合う様々な世代の人々の姿にパリの文化の豊かさを見て、訪れる度に感激する。
こちらは昨年開催された展覧会で見つけた写真集。
Berenice Abbottは30年代の女性写真家。MIT研究所との共同作業で制作した「科学写真」は、「資料」だけどすごくかっこいい。
「静電気」の写真。
「同時に放たれた2つのゴルフボール」
バリー・ユアグローみたいなタイトル。
リー・フリードランダーのようなかっこよさ。
ところでパリのJeu des Paumeへは、ルーブルの三角からコンコルドに向かってJardin des Tuileriesを歩き、真ん中にあるスタンドでカフェを買って、公園を抜けて行くのがいい。人々で賑わう夏も、枯葉の舞い散る寂しい秋も、いつでも詩情に溢れた公園。
2013/01/09
Polaroids : Guy Bourdin (Editions Xavier Barral, 2009)
Donlon Booksのショーウィンドウで見つけて、思わず買ってしまった写真集。ギィ・ブルダンの作品はフリーズしたような「完璧な瞬間」が特徴だけど、その撮影ポラではその「完璧な瞬間」の前後や、画面で見切れているパーツが見える。それがすごく生々しくて、色っぽい。はみ出した口紅が見えたような感じがする。
いい具合に退色したポラロイドが、あれらの写真の背後に「撮影現場」が存在したこと、その息づかい、完成度の高いギィ・ブルダンの写真の持つ「美しさ」とはまた別の美を見せてくれる。
2013/01/07
IN AND OUT OF FASHION : Vivian Sassen ( Prestel, 2012)

Vivian Sassenの新作をお借りしました。(後藤さん、ありがとうございます。)
1998 - 2012のファッションシューティングを集めた写真集。
こうしてまとまって見てみると、彼女が21世紀のファッション写真の中でいかに独自の世界観を確立しているか良く分かる。コンサバではない服をコンサバなポージングやモデルで撮影するカメラマンとは一線を画する目線がある。ファッションに対する理解、というよりは最も先を行くデザイナーと同じ地平を見ているのかもしれない。
巻末のCharlotte Cottonの分析も面白い。「部族の儀式を思わせる」、ポージングや立体的な画面の構図など、息をのむほど魅力的なページが続く。
彼女の写真には黒人モデルがよく登場するが、幼少時をケニアで過ごしたというルーツゆえんか分からないけれど、常にハイ・コントラストへの強烈な渇望が感じられる(強いライティングも含めて)。事実、黒人モデルの方が写真が締まっています。
2013/01/06
Let's sit down before we go : Bertien van Manen (MACK, 2011)
オランダ人の写真家Bertien van Manenが、1991年から2009年の間、ロシアを旅して撮影した大量の写真。
そのコンタクトシートからStephen Gillがイメージを選択し、編集した写真集。
当時のソビエトでカメラは高級品。
身を守るために安いオートカメラで撮影し続けた、日常の小さな、ドラマのない瞬間。
Stephen が選んだのは、Manenがそれまで選ばなかった、「ハズレ」の写真ばかり。「でも彼を信じた」とManen。
印象的なタイトルは、ロシアの人の言い伝えより。長い旅に出る前に座って、なぜ旅に出るのか、どこへ向かうのか、考えよう。
そのコンタクトシートからStephen Gillがイメージを選択し、編集した写真集。
当時のソビエトでカメラは高級品。
身を守るために安いオートカメラで撮影し続けた、日常の小さな、ドラマのない瞬間。
Stephen が選んだのは、Manenがそれまで選ばなかった、「ハズレ」の写真ばかり。「でも彼を信じた」とManen。
印象的なタイトルは、ロシアの人の言い伝えより。長い旅に出る前に座って、なぜ旅に出るのか、どこへ向かうのか、考えよう。
2013/01/03
Redheaded Peckerwood : Christian Patterson (MACK, 2011)
アメリカで実際に起きた、若いカップルが殺人の末に逃亡し、逮捕されるまでの話。
実際の写真、実際の資料と、事件のずっと後の現在、その足跡をたどる最中にChristian Pattersonが撮影した写真が混ざって構成されている。
冊子付
↓
造本、凝っています。
領収書付。
↓
実際の写真やメモ
↓
道中に撮影した写真。
何気ない風景も、狂気や事件性を帯びて見えてくる。
↓
in almost every picture : Erik Kessels (Kesselslramer, 2010)
オランダの広告代理店KesselskramerのErik Kesselsが手がけるシリーズ「in almost every picture」。ファウンド・フォト、というより「普通の人」があるテーマに基づいて撮影した写真(振り返ってみればテーマが出来ていた、ということもあるみたい)を一冊の本にまとめている。オランダ人らしく、皮肉とユーモアと愛情に溢れたシリーズ。
中でも好きな一冊を。
黒い犬を撮影し続けた家族の話。
可愛がって、一緒に写真に写りたいのに、可愛い姿を収めたいのに、どう撮ってもシルエットしか写らない。
ぬいぐるみ?
↓
置物?
↓
中でも好きな一冊を。
黒い犬を撮影し続けた家族の話。
可愛がって、一緒に写真に写りたいのに、可愛い姿を収めたいのに、どう撮ってもシルエットしか写らない。
ぬいぐるみ?
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置物?
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家族の最高のスマイルがこの上ない悲哀と、笑いを誘う。
人生のうち長い時間と、切実な愛情をかけて行ってきた行動が、おかしみに満ちているなんて、バカバカしい。でも愛らしい。
生きるってこんな風に、泣けてきて笑っちゃうものかもしれないです。
他に、水に濡れる太った妻を撮り続けた男の話、ウサギの頭に色んなものを乗せてみた男の話、お祭りで射的を毎年した女の話、レストランで客に可愛がられた子豚の話など、どれも短編小説のような写真集。
SUNDAY : Paul Kooiker ( Van Zoetendaal Publishers, 2011)
日曜日、裸の大女が庭にいる。
それだけの作品なのだが。
非常に美しく、フェティッシュな写真集。
巨大な女の肉体が妖しく、でも美しく、風景と溶け合う。
幻想小説のようでもあり、シュルレアリズムのようでもあり。
必見です。
http://www.paulkooiker.com

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