2012/12/27

The Mushroom Collector : Jason Fulford ( The Soon Institute, 2010 )



オランダ人の知人から『僕が手伝ったキノコの写真集が出るから見てね』と言われたのは2010年のこと。現在のキノコブーム以前だったので(今ではキノコは深い撮影対象だと知ることができた)、キノコ?と首を傾げていたが、出来上がりをみてその素敵さに感激した。

余談だが、『世界の菌シリーズ:きのこ』みたいな本を想像していたが、こういった『こねこ』とか『パンダ』とかの単体生物がひたすら撮影された写真集(一般書店で花や星の写真集の並びにあるやつ)は日本特有のものらしく、外国人にはたいそう奇妙に映る、とは友人Jason Evansの談。だからすごく面白い、とも。

写真家であり、出版社J&L Booksの主宰でもあるJason Fulfordは友人からフリーマーケットで入手した大量のキノコの写真を受け取った。そのイメージはやけに頭にこびりつき、やがて彼自身が撮影した写真と織り交ぜて一冊の写真集にした。それがこの本。本書は2010年ベスト写真集に数多く選ばれ、現在は絶版となっている。
Jason Fulfordのスタイリッシュな写真集は常々人気を獲得しているが、スタイルの陰に深い写真への知識や洞察が見て取れる。そもそもとても難しい写真集だと思うのだ。前半は前述のファウンド・フォトと、彼自身によって撮影されたWilliam Eggleston的アメリカの風景が混ざっており、後半は暗室写真のような、不思議なセットアップ写真と混ざっている。彼が撮影したものは6×6の正方形、ファウンド・フォトはポストカードの比率。そして、ほぼ全てのイメージにキャプションが付いているが、これがまたイメージと関係があるようでないようで、こちらを煙に巻く。いわゆる「写真論」的、アカデミックな読み解き方もできそう。
造本の『今っぽさ』と同居する写真的クレバーさ。彼のヨーロッパでの人気ぶりを見ていると、アレック・ソスにも通じるアメリカ特有のこういうブリージーなカッコよさはヨーロッパ人から見ても憧れみたいだ。もちろん私も、憧れてしまう。

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